ネクライトーキー 『ONE!』 (2018)

 

コンテンポラリーな生活(以下、コンポラ)のメンバー3人に、ギターボーカルもっさ、そしてキーボーディストむーさん(当時はサポート)を迎えて結成された、男女混合5人組ロックバンド・ネクライトーキーの初となる全国流通作。

ストレートかつ性急、それでいて熱気と荒々しさあふれるロックサウンドを主たる武器としていたコンポラとは音の方向性が異なっていることが一聴して理解できるほどに、キャッチーかつカラフルな仕上がりとなっている今作なのですが、それを導いたうちのひとつが一時期は「ハム太郎」とも称されていた(いうほどハム太郎かな?とは思いつつ...)もっさの歌声。この歌声と朝日さんが書く暗めの歌詞が化学反応を起こした結果がそのまま現在にまで続くネクライトーキーらしさになっているということで、この時点でバンドの根幹がひとつ打ち立てられているということが感じられるというほどです。

そして、ネクライトーキーをネクライトーキーたらしめるサウンドを生み出したもうひとつの要素として挙げられるのが、リードギターとキーボードがいるというバンドの編成。これにより、朝日さんの表現の幅が大幅に拡張された結果、様々な曲調に挑戦することが可能に。アルバム全体を通してどの曲であってもそれは感じられるというところなのですが、とくにこの編成でなくてはと感じられるのはバンドの代表曲『オシャレ大作戦』。豪快過ぎるオケヒは笑ってしまうくらいにインパクト抜群です。

こういった要素が噛み合いまくってロック好きに刺さりまくった結果、メジャーデビュー前にもかかわらず、数々のフェスに出演したり、自主企画のチケットが軒並みソールドアウトするなど、とてつもない勢いでブレイク街道へ突入したのが2019年のネクライトーキーだったのですが、それほどの人気を生むというのも納得というほどに、今作『ONE!』は圧倒的な初期衝動とポピュラリティーにあふれる作品であると思います。1stにして、ネクライトーキー史における金字塔。

 

favorite→『レイニーレイニー』 / 『ゆうな』 / 『遠吠えのサンセット』

FIELD OF VIEW 『Memorial BEST ~Gift of Melodies~』 (2002)

収録曲
(Disc 1)
01. gift
02. 君がいたから
03. 突然
04. Last Good-bye
05. DAN DAN 心魅かれてく
06. ドキッ
07. Dreams
08. この街で君と暮らしたい
09. 渇いた叫び
10. めぐる季節を越えて
11. 君を照らす太陽に
(Disc 2)
01. CRASH
02. 青い傘で
03. Still
04. 冬のバラード
05. Beautiful day
06. 秋風のモノクローム
07. Truth of Love
08. 夏の記憶
09. 蜃気楼
10. Melody
11. gift ~my dearest

※サブスク配信はなし。ダウンロード購入は可。

 

7年以上にわたる活動を終了し、解散することを発表したFIELD OF VIEWがリリースしたベストアルバム。

今作は、前身であるview時代のものを除く、すべてのシングルを網羅した上で新曲(ファンへの深い感謝をシリアスなメロディーに乗せた楽曲です)を加えて時系列順に収録しているというシンプルな内容が非常にありがたいです。

2枚組ということで概ね活動のちょうど半分くらいでディスクが区切られているのですが、活動前期にあたるディスク1において皆がイメージするFOVがしっかり鳴っている(文句なしで良いです)反面で、興味深い内容になっているのがディスク2。ハードロックへの挑戦やオーケストラとのコラボレーション、はたまたアコースティックサウンドなど様々な角度のアプローチから楽曲制作が行われた末、ついにはバンドサウンドですらなくなり、解散決定後にリリースされたラストシングル『Melody』でようやく皆がイメージするFOVらしい爽やかさを伴ったムードへと回帰......という、まさに一筋縄ではいかなすぎる道のりが生々しく収められています。それはもはや、単にバンドの音楽的好奇心を超越した見えざるパワーを伺ってしまうほどの混沌ぶり...。

ただ、そういった試行錯誤の過程でも、リリースされたシングルがどれも浅岡さんの唯一無二の歌声を以てしてしっかりと一貫性を持たせられているというのがFOVというバンドの非凡なところ。ある意味で「らしい」とは思いつつも期待を大きく裏切ってはこない初期の楽曲よりも、後期の楽曲のほうが面白いと感じられるのは浅岡さんの歌声とチャレンジングな楽曲が常に化学反応を起こし続けていたからというのもあるのかもしれません。

ちょっと偏った視線から色々と書いてきましたが、なんにせよ、今作はFOV史上においてシングルを完全に網羅している唯一のベストアルバムであるというシンプルな点からして、決定盤というような内容になっていると思います。ビーイングの企画ベストを除けば、『突然』、『DAN DAN 心魅かれてく』、『渇いた叫び』あたりの有名曲が、すべて原曲バージョンで収録されているのも地味に今作だけということで、最初に手に取る1枚にも。

 

favorite→『突然』 / 『DAN DAN 心魅かれてく』 / 『青い傘で』 / 『Beautiful day』

SURFACE 『WARM』 (2003)

収録曲
01. なまくらジャック
02. 雫
03. アイムファインセンキューアンジュー?
04. ろくでなし
05. 食卓
06. きっと
07. こんなんだったっけ
08. NEWS
09. 歌
10. 闇の感情
11. Y字路
12. リミット
13. スチームミルク

※サブスク配信はなし。ダウンロード購入は可。

 

『歌』、『NEWS』、『アイムファインセンキューアンジュー?』といった3枚のシングルを含む4thフルアルバム。

前作『ROOT』までのポップでファンキーで楽しくて...という様子はすっかり消え去って、歪みまくったエレキギターがひたすらに唸りをあげるバッキングがクールさ極まっているという音像が特徴的な今作。収録曲の概ねが大なり小なり憂いを帯びており、これまでに積み上げてきたイメージを壊したかったのか?ホーン隊を雇う予算がなかったのか?路線変更か?なんて邪推してしまいそうになるほどにSURFACEディスコグラフィーにおいては異彩を放ちまくっているのですが、椎名くんのブログによるとこのタイミングでふたりがSURFACEとして挑戦したかったのがこの音であったそう。それを前提に聴くと、納得がいくという感じも。当時の心境を吐き出すような赤裸々な歌詞に感じられる椎名くん、ひいてはSURFACEふたりの等身大さはこの生々しい音だからこそ、と感じられます。

2005年以降、ソニーへ移籍してリスタートを切ることになるふたりですが、その際、エイトビート感が強いストレートなバンドサウンドを音楽性の軸に据えるようになります。その様子には、今作『WARM』で鳴らしたバンドサウンドでなにかを掴んだことで後につながるものがあったというように思えて、異色作である今作もSURFACEの歴史の中において大きな意味を持っていると感じられるものがあります。

個人的にはSURFACE史上もっとも好きなアルバムなのですが、このひとつの路線を心ゆくまでやり切っているという感がたまらないんですよね。それが自分がだいすきなエレキギターが前に出てきているというサウンドであることで尚更。この雰囲気でもう1枚くらいアルバムを聴きたかったくらいの感じは正直あります。

 

favorite→『雫』 / アイムファインセンキューアンジュー?』 / 『リミット』

衝動的の人 『BEST POSITION』 (2011)

収録曲
01. ワールズエンドスターバースト
02. wkmk
03. 恐怖!ぼっち少女のトラウマ催眠
04. Floriography
05. spinning neko kick
06. -k
07. Shanghai kung-fu generation
08. Samurai shodown

メロンブックスでのみDL購入可

 

衝動的の人ことシノダさんによる1stフルアルバム。

名古屋での音楽活動を経て辿り着いたインターネットで主に東方プロジェクトの楽曲を「衝動的に」アレンジすることで一部で熱狂的な支持を得ていたシノダさんがC81でリリースしたのが今作です。

本人も特設サイトで「自己ベスト盤」と評しているのですが、その言葉通りに空色作戦で発表した曲や提供曲のセルフカバー、他サークルの企画に参加したときに制作した楽曲、ニコニコに投稿していた曲などを選りすぐった上で再録し、アルバムとして一纏めにしたという内容で、もうこれは「衝動的の人」名義での決定盤といえるような1枚!

wowakaさんとバンド活動を共にする中で生まれた大胆さと緻密さという2面を兼ね備えたギタリスト(とくに4人体制時代)というイメージからすると、どちらというとガッツが強く感じられるギターサウンドが鳴っている(公言しているHi-STANDARDStereo Fabrication of Youthの影響を多大に感じます)のですが、憂いを含んだ歌声や個性しかない歌詞、テンションコードを多用するコードワークなどは現在のシノダさんとしっかり地続きであるということがわかって、早くから自身の作風が完成していたということも感じられます

そういうわけで、まさに初期のシノダさんを知るにはうってつけで、3人体制以降のヒトリエが好きな人にもしっかり刺さっていくようなそんなアルバムであると思います。「B-sides album」と称されている『peaky』とセットで聴くと2度おいしい感じもありますね。

マ~、本当はサブスクにもあればもっと取っつきやすくなっていいと思うんですが、過去作に深い思い入れがあるという様子が見受けられながらもcakebox含め未だにまったくやっていないということは色々と難しいんでしょうね...。でも、シノ鉄終わりでサブスク解禁という報せがきっと...いや、ないか...。

 

favorite→『Floriography』 / 『-k』 / 『Samurai Shodown』

King Gnu 『Sympa』 (2019)

 

ヒット曲『Flash!!!』、『Prayer X』を収録したメジャーデビュー作。

元来の常田さんの音楽性からすると大分邦ロックナイズドされた音が鳴っていたのが前作『Tokyo Rendez-Vous』でしたが、今作はさらに強化された邦ロック的なそれが鳴らされながらも、そこだけには留まらないアイデアにあふれた内容になっている、というのが今作『Sympa』であると思います。

大胆にラップパートを取り入れた大アンセム『Slumberland』やジャズ由来のバンドのグルーブを当時の邦ロック的な型に落とし込んだような『Sorrows』、弦楽を大胆に取り入れた『Don't Stop the Clocks』、壮大なバラード曲『The hole』などには、King Gnuの音楽がさらにステップアップしているということは元より、バンドの本懐を遂げるべくより間口を広げようとしているという様子が伺えます。バンドの本懐というのは、シンプルに言うと数多のファンがいるロックバンドになるということで、それを踏まえて聴くと彼らが目指しているスケール感というのも見えてくるような感じもあったり。

とはいえ、なかなか多彩なタイプの曲が揃っている作品であるというのは間違いないので、ともすれば散漫になりかねないのでは?というくらいの感じがあるのですが、そこを1枚のアルバムとしてしっかり一貫性を持たせているのが常田さんのルーツを感じさせるような4曲のインタールードです。これに関しては、今作が初出となっているのですが、のちの『CEREMONY』、『THE GREATEST UNKNOWN』でも用いられているので、常田さんにとって結構な手ごたえがあったのではないのでしょうか。この様子から、常田さんがオリジナルアルバムという形態への強いこだわりを持っているということが伺えるというところも。

以上のように、今作は、King Gnuのみならず、常田さんの音楽人生においても大きなターニングポイントになっているというような作品なのですが、13曲を35分強で駆け抜けていくという再生時間のコンパクトさもこのときのバンドの覚醒ぶりを表しているように感じられます。ミックスにもっとパンチが効いていたら...と思わなくもないものの、それを補って余りあるほどの、上がり調子のバンド特有の勢いと熱量。

ファンやシーン、はたまた業界など、各方面からの期待もあったことで、新人としてはかなりの好セールス(オリコンのアルバムセールスランキング初登場4位)を記録することとなった今作なのですが、その結果に負けないような強力な内容のアルバムであると思います。

 

favorite→『Slumberland』 / 『Prayer X』 / 『The hole』

BYEE the ROUND 『Better than young, all right?』 (2022)

 

そうせざるを得ないという状況に陥り2015年末にはじまった活動休止期間を経て、2019年に復活を果たしたバイザが約8年ぶりにリリースした5thミニアルバム。

よほどの出来事がないかぎり復活はないんだろうな...と思っていたバイザでしたが、CLUB251の河崎さんの働きかけ(この辺の経緯はCLUB251の30周年ページを参照)によりまさかの復活の上、数年のライブ活動を経てなんと新譜までリリース。それがこの『Better than young, all right?』です。

そんなタイトルは歳をとった自分たちへの自信を感じさせるものなのですが、その通りに前作から8年という時を経てなおまったく衰えていない松山さんのメロディメーカーっぷりと現在のバイザの成熟した雰囲気を楽しめるアルバムとなっている、という感じで、どちらかというとメロディーを聴かせるタイプの曲(勿論、どれも素晴らしい仕上がりになっています)が多いかなという印象も。

そんな中だからこそ、バンドの強力なアンサンブルを聴かせるリード曲『フェブラリー』とライブにおける盛り上がりを想起させる『スモーキーシネマパラダイス』あたりのアッパーな楽曲がより一層強力に感じられるのですが、とくに前者の『フェブラリー』は今彼らがリリースするものとして格別の説得力を持っているように思うほどの会心の出来です。スリリングに音を重ねていくリフ部分やアウトロのサトシアンテでしかないギターソロ、歌の裏で鳴る生々しくヘヴィなリズムなどにこれはもうバイザでしかないと思える要素が凝縮されていて、リード曲になったというのも納得。音源として復活の狼煙をあげるにこれ以上ふさわしい曲はないと思います。

総じて、現在のバイザが再び現在進行形のバンドになっているということをありありと宣言するようなそんなミニアルバムです。結構なブランクがあったにも関わらずしっかり前作から地続きになっていると感じられるその内容は、バイザの音がそもそも完成していたことは元より、個々がバンド活動を続けてきたからこそであると思っています。次作への期待も膨らんでしまいますね。すぐではないと思いますが、いつかは...。

 

favorite→『フェブラリー』 / 『me too』 / 『東京タワー』

UNISON SQUARE GARDEN 『JET CO.』 (2010)

 

佐久間正英さんをプロデューサーとして招いた2ndアルバム。

前作『UNISON SQUARE GARDEN』はその収録曲の殆どがインディーズ時代から暖められてきたレパートリーだったということで、ライブバンドとしての圧倒的な熱量と自信が籠められたロック色の強い内容になったのですが、今作では一転、どちらかというとポップさと軽やかさが強く感じられる内容であるというところがあります。リリース前から披露されていた曲が半分ほどを占めているという点は前作と共通するという部分がありながら、大分印象が変わったなという雰囲気。

これはそもそも今作の収録曲の曲調や歌詞が前作の収録曲よりもポップな雰囲気を纏っているようになったこと(『チャイルドフッド・スーパーノヴァ』とか『ライドオンタイム』、『アイラブニージュー』なんかは特に現在のユニゾンにまで繋がるという感じすらある感じも)というのを前提にして、とくに大きいかなと思うのはミックスが変わってバンドの音が丸くなったことです。前作がインディーズ時代からの延長線上にある感じのエッジが効いた音作りだったので明確に変わったなのはここかなと思ったり。このあたりは、やはり佐久間プロデューサーの手腕なのでしょうか。

と、そんな変化がありつつも、今作を今作たらしめるものはタイトルに冠されているジェットコースターという単語さながら息をつく間もなく駆け抜けていくアルバムの構成当時のインタビューによると、とくにこの辺りを指してこの内容とかタイトルとか、ということはないようなのですが、それでも曲間の短さと、先に書いたポップさと軽やかさが作用したこの勢いには、タイトル通りのスピード感を感じ取ることができます。個人的には、今作を聴いている最中の感覚は後のユニゾン史に残る大名盤『Patrick Vegee』につながっていくような感じもあったり

個人的な贔屓目(初めて購入したユニゾンのアルバムなので...)もあってなかなかお気に入りのアルバムなのですが、この時期ユニゾンは大スランプに陥っていたようで今でも今作の収録曲は一部を除いてライブで演奏される機会というのが少なくなっています。たしかにインパクトという面で見ると、飛びぬけた曲はそんなに多くないのでセトリに入れづらいだろうな~とは思いはするものの、もっとライブで聴きたいという、そんな気持ちがあるアルバムです。

 

favorite→『チャイルドフッド・スーパーノヴァ』 / 『アイラブニージュー』 / 『23:25』