King Gnu 『Sympa』 (2019)

 

ヒット曲『Flash!!!』、『Prayer X』を収録したメジャーデビュー作。

元来の常田さんの音楽性からすると大分邦ロックナイズドされた音が鳴っていたのが前作『Tokyo Rendez-Vous』でしたが、今作はさらに強化された邦ロック的なそれが鳴らされながらも、そこだけには留まらないアイデアにあふれた内容になっている、というのが今作『Sympa』であると思います。

大胆にラップパートを取り入れた大アンセム『Slumberland』やジャズ由来のバンドのグルーブを当時の邦ロック的な型に落とし込んだような『Sorrows』、弦楽を大胆に取り入れた『Don't Stop the Clocks』、壮大なバラード曲『The hole』などには、King Gnuの音楽がさらにステップアップしているということは元より、バンドの本懐を遂げるべくより間口を広げようとしているという様子が伺えます。バンドの本懐というのは、シンプルに言うと数多のファンがいるロックバンドになるということで、それを踏まえて聴くと彼らが目指しているスケール感というのも見えてくるような感じもあったり。

とはいえ、なかなか多彩なタイプの曲が揃っている作品であるというのは間違いないので、ともすれば散漫になりかねないのでは?というくらいの感じがあるのですが、そこを1枚のアルバムとしてしっかり一貫性を持たせているのが常田さんのルーツを感じさせるような4曲のインタールードです。これに関しては、今作が初出となっているのですが、のちの『CEREMONY』、『THE GREATEST UNKNOWN』でも用いられているので、常田さんにとって結構な手ごたえがあったのではないのでしょうか。この様子から、常田さんがオリジナルアルバムという形態への強いこだわりを持っているということが伺えるというところも。

以上のように、今作は、King Gnuのみならず、常田さんの音楽人生においても大きなターニングポイントになっているというような作品なのですが、13曲を35分強で駆け抜けていくという再生時間のコンパクトさもこのときのバンドの覚醒ぶりを表しているように感じられます。ミックスにもっとパンチが効いていたら...と思わなくもないものの、それを補って余りあるほどの、上がり調子のバンド特有の勢いと熱量。

ファンやシーン、はたまた業界など、各方面からの期待もあったことで、新人としてはかなりの好セールス(オリコンのアルバムセールスランキング初登場4位)を記録することとなった今作なのですが、その結果に負けないような強力な内容のアルバムであると思います。

 

favorite→『Slumberland』 / 『Prayer X』 / 『The hole』