ヒトリエ 『REAMP』 (2021)

 

バンドの絶対的な核であったwowakaを失うという大きな出来事と直面しながらも、歩みを止めなかった3人が、前作『HOWLS』から2年弱の時を経てリリースした5thフルアルバム。

wowakaさんの追悼会を終えていくばくも経ってない3か月後には急遽組んだ全国ツアーやいくつかのフェス出演をこなし、年明けには初のFCライブ、そしてベストアルバムリリース、中止になってしまったライブの代替としての数回にわたる無観客ライブ......と、ひたすらがむしゃらにバンドを動かし続けた3人でしたが、あらためてヒトリエは現在進行形で進めていくという意思の元で新曲の制作に着手することに。個々のメンバーがそれぞれ過去の活動の中で楽曲制作を行っていた経験があるということで分担して作曲を行い、完成したのがこの『REAMP』です。

そんな今作は、先行シングル『curved edge』(シノダ作)、『YUBIKIRI』(ゆーまお作)、『イメージ』(イガラシ作)を筆頭に、まさに今の3人だからこそという仕上がりの作品(wowakaさんの方法論の安易な模倣を行っていない)となっているのですが、それと同時に今作がどうしようもなくヒトリエのアルバムでしかないと思えるのは、結成から2019年まで4人で練り上げてきたグルーブがしっかりと根底にあるということが感じられるから。どんなサウンドに挑戦したってこのメンバーで演奏すればちゃんとヒトリエの音になるというほどの極まりを感じさせたのが前作『HOWLS』だったのですが、もうそれはメンバーが一人欠けてしまうということが起きたって、揺るぎようがなかったと思えるのが今作であると思います。

このように曲や演奏そのものに関しては3人の強さを改めて感じさせるものになっている一方で、歌詞については喪失の悲しみを踏まえた視点で書かれたもの、はたまた世の中への怒りを感じさせるもの、というのが殆どであり、シノダさんが抱え込んでいるものの大きさを感じさせる内容に。元々、シノダさんの歌詞は憂いのあるタッチのものが多いのですが、それにしてもこれだけ具体的な心情を吐露するようなものというのはあまりなかったように思います。ここからは、どうしても書かずにはいられなかったという心境も伺えるように感じられて、聴きながら胸が痛くなるくらい(ごく個人的な話ですが、聴いているとつらくなりすぎるのでリリースから1年ちょっとはまともに聴くことができませんでした...)。そういうこともあって、本作はこの時期のシノダさん自身のドキュメントであると感じられるというところもあります。

『curved edge』リリース時から本格的に動き始めた「3人のヒトリエ」がリリースしたアルバムということで、当時は言葉にもならないような感情が渦巻いたのを覚えています。リリース時期、当時の先行き不透明な社会情勢に心乱されまくっていて精神的にも不調であったという個人的な事情も重なって、いまだにあまりフラットな感想は書けない、そういうアルバムですね...。リリースから大分経ったこともあって、最近はある程度気軽に聴けるようにもなりましたが、それでも単に「好き」という一言で表してしまえないような、そんな気持ちがあるという、そんなアルバムです...。

 

favorite→『curved edge』 / 『ハイゲイン』 / 『イメージ』