UNISON SQUARE GARDEN 『Populus Populus』 (2011)

 

TVアニメ『TIGER & BUNNY』のOPテーマ『オリオンをなぞる』などのアニメタイアップ曲がきっかけとなり、大躍進を遂げていたタイミングでリリースされた3rdフルアルバム。

バンドとしての壁にぶつかる中でリリースされた前作『JET CO.』の売り上げが思うように伸びなかったことも起因して、バンドの絶対的ソングライターである田淵がシングル曲の作詞作曲をボーカルの斎藤さんに譲るというトピックも起こり、ますます袋小路に迷い込んでいる(その『スカースデイル』自体は名曲であるものの)という状況下にあったユニゾンですが、起死回生のアニメタイアップ『オリオンをなぞる』を契機として、アニソンをルーツに持つ田淵さんがメジャーバンドとしてのソングライティングの術を掴むことに成功。そういった流れもあり、大きなステップアップを果たしたのが今作『Populus Populus』です。

ブレイクスルーのきっかけとなった『オリオンをなぞる』やストリングスを迎えた名バラード『未完成デイジー』(ラブソングですが別れを前提にしているのがひねくれててらしい)を筆頭に、後に繋がっていくようなバンドのあらたなポップネスの萌芽を感じさせる一方で、特筆すべきはスリーピースロックバンドの限界に挑むような躍動感あふれるバンドアンサンブル。現在もライブにおいては頻出の『場違いハミングバード』を中心に、バンドとして壁にぶつかっている間もたゆまずライブハウスで地道に鍛え上げてきたからこそ結実させられた演奏の熱が確実に内包されているのを感じられます。

そういった、意外とバンドサウンド強めの内容からは、華やかな『オリオンをなぞる』って若干はみだしているかも...と今となっては感じたりする(のちの覚醒を知ってしまっているから余計に)のですが、リリース当時はオリオンからの揺り戻しでロックに仕上げてくれたからこういうバランスになったのかななんて感じたりもしていました。

ま~、ここまで散々オリオンオリオンと言ってきました(それくらい、2010年代のアニソンシーン、そして邦ロックシーンに影響を与えた曲だと思っています)が、それくらいにニゾンの歴史はバンドの個性を確立した『オリオンをなぞる』以降と、それより前(下北沢発ギターロックの系譜)で分けられると個人的に思っています。今作にはそのどちらも混在しているのですが、それによって実は意外と過渡期的な内容という印象も(『CAPACITY超える』のようなユニゾンの歴史においても異色な曲もそれを感じさせます)。

ギターロックサウンドを主としてきたユニゾンとしては到達点でありながらも、それと同時に、次のピリオドが幕を開けたことも感じさせるようなそんな1枚であると思います。

 

favorite→『kid, I like quartet』 / 『きみのもとへ』 / 『場違いハミングバード