B'z 『The 7th Blues』 (1994)

 

ミリオンヒットシングル『Don't Leave Me』を収録した7thフルアルバム。

渚園で開催され2日間で10万人を動員するという大成功を収めた前年の野外ライブを(世間のイメージにおける)ポップグループB'zとしてのひとつの区切りとし、次なるステップアップのための一手として放ったのが今作『The 7th Blues』です。『裸足の女神』、『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』という2枚のメガヒットシングルを容赦なく未収録とした上で、ディスク2枚にわたって重厚かつ生々しいロックサウンドを展開しているこの内容には、B'zがロックバンドであるということを改めて声高に宣言しているということが如実に感じられます

海外のロックバンドへの憧憬が遠慮なく炸裂しまくるサウンドには、B'zのふたりを含む制作チームがひたすら純粋に楽しんでやっているというのがつよく感じられるのですが、そうは言ってもこれを商業作品として出すということに関して躊躇いはなかったんだろうかと思うくらいに、言ってみれば攻めた内容です。リリース後に行われたツアーの内容やビジュアルの変貌も含めて、最早パブリックイメージを粉砕する勢い

とはいえ、いきなり非キャッチーに変わり果ててすべてを置き去りにしたというわけでは勿論なく、とくにディスク1には従来のB'zらしいわかりやすくポップな瞬間も多く見られ、前作『RUN』としっかり地続きになっています。このあたりには彼らが商業音楽家として培ってきたすぐれたバランス感覚を感じられるというところがあったり。

そういうことで、2枚組の今作において真に物議を醸したであろうはディスク2。何のバージョン表記もされていないままでブルースに変貌した『LADY NAVIGATION』やB'z史に残る珍曲『もうかりまっか』を始めとして、リファレンスが明らか過ぎる『Sweet Lil' Devil』、『farewell song』など、一切希釈していないロックの原液のような内容です。B'zがこれからロックバンドとしてやっていくために一度ルーツを開示するという必要な作業だったと思うのですが、それにしたって濃い。ある意味で若さゆえという感じすらありますね。

後には本人たちも「暗黒時代」と称している時期にリリースされたアルバムですが、じつはB'zにとってターニングポイントにあたる重要作。長尺のリリースツアーを含めて、今作で得られたロックバンドとしての手ごたえは、次作以降連綿と続いていくB'zのロックサウンドの礎になっています。

 

favorite→『LOVE IS DEAD』 / 『MY SAD LOVE』 / 『Sweet Lil' Devil』 / 『JAP THE RIPPER』